[まつむし音楽堂]通信

 2013年初秋号

 

●お盆をすぎても連日の猛暑は変わらず、昭和17年夏の記録を更新するいきおいです。むかしは「日射病」になるから外出するときには帽子を、といわれたものですが、いまは「熱中症」になるから水を、というようになりました。

●この夏、常盤小学校(阿倍野区)51期生の同窓会があって、およそ50年ぶりに級友たちと出会いました。そのひとり、松山に住むYさんは、地元「坂の上の雲ミュ-ジアム」で毎月おこなわれる、司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」のリレ-朗読会に参加しているそうです。正岡子規や夏目漱石ゆかりの松山はさすが、文学の土地柄ですね。

●ところで、大阪の文学はといえば、織田作之助、梶井基次郎が思い浮かぶのですが、梶井基次郎は一時期阿倍野にも住んでいました。「サッちゃん」の童謡で有名な芥川賞作家、坂田寛夫も阪南町(阿倍野区)の出身。工芸高校(同)を卒業した川上未映子さんも「乳と卵」で芥川賞に輝きました。現在の丸山通(同)あたりに隠棲した吉田兼好、かつては浄瑠璃に近年では小説や漫画の主人公として登場した陰陽師、安倍晴明の生誕地(同)・・・。大阪文学は、意外にも身近な散歩道に多数存在していたのです。

●毎年9月26日、安倍晴明神社で執り行われる晴明公大祭の直会(なおらい)の場となる阿倍王子神社参集殿では、ことしも「あべのカルテット」が奉納演奏をおこないます。天文博士・安倍晴明公のご威光を偲び、月や星など天体にちなんだ歌の数々をおとどけします。ご来場ください。

[送り火]
■「圭子の夢は夜ひらく」(石坂まさを作詞)―。花が開くように夢が「ひらく」のでしょうか。戦後高度成長期のピ-クとなった1970年、大阪万博の年にこの曲が 大ヒットしました。

「流れ流れて東京は 夜の新宿 花園で」「やっと開いた花一つ」 (「命預けます」)。しかし、「何処で生きても ひとり花」「何処で生きても い つか散る」―。  

 藤圭子さん。あまりにも切ない最期だったね。儚(はかな)い人生の思いを煮詰め て詞(ことば)に託した、昭和歌謡の世界が、また遠くなってきました。

(和田高幸)

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