まつむし音楽堂通信

 2014年 春号

 

●カーラジオから流れていた歌に、思わず聴き入ってしまいました・・。ありふれた子守唄みたいで、どこかなつかしい、しかし悲しい歌でした。すこし掠れた声の主は、まさしく島倉千代子さんでした。

●「からたちの小径(こみち)」は、島倉さんの死の直前に録音されたもの。作曲・作詞は、南こうせつ・喜多條忠の「神田川」コンビ。さもありなん、です。音声の裏側にかぶさる哀切の情に、すでにピークメーターの針が振り切っています。

●全聾の作曲家を装いながら巧みにゴーストライターを操っていた佐村河内守氏の記者会見も印象に残りました。メディアはたやすく虚像をつくりだしますが、一方ではそれを壊すことに加担するのです。どちらにしても視聴率がかせげるので、経済効果はアップするのでしょう。

●活字の場合は編集者が代筆する場合も少なくありませんが、裏方を支える編集者が著者になりすましてTVに登場したら問題になるのは自明です。医薬品や生命工学分野での論文捏造も、マルチメディア時代の産物といえるでしょう。

●バッハの時代にも、バッハの名を借りて作曲した輩がいたようです。たとえばフルートソナタ変ホ長調(BWV1031)は近年、バッハ全集から外されました。贋作、つまりバッハ自筆の作品ではないとしても、これが名曲であることに変わりはないのですが。

●4月1日、消費税が5%から8%に変更されました。TV報道などで「消費」ばかりに目が向いたせいか、3月末までに家や装飾品など高額商品を買った人、日常の消耗品を買い急いだ人は少なくなかったようです。わたしは節税対策として、歌や楽器の演奏をおすすめしています。書庫に眠る古い楽譜を音にして楽しむなどの知的活動に消費税はかかりません。そればかりか生産性の向上にも役立つと思いますが―。

(和田高幸)

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