まつむし音楽堂通信

 2015年 立春号

 

●「赤とんぼ」「からたちの花」などの日本歌曲で知られる作曲家、山田耕筰(1886-1965)に師事した声楽家、嘉納愛子さん(相愛大学名誉教授)はことし108歳。超高齢にもかかわらず、今もご自宅で山田直伝の歌唱法を指導しておられるというから驚きです。

●山田耕筰は、日本語の歌詞をとくに大切にした作曲家で、日本初の管弦楽団(N響の前身)をつくるなど西洋音楽の普及に努めました。後に「相愛女子短期大学音楽科」となる「女子専門学校音楽科」の科長として、関西の音楽界の発展にも寄与しています。

●北原白秋と共に雑誌『詩と音楽』を創刊、また演出家の小内山薫とは劇団「土曜劇場」「新劇場」を結成、さらに抽象絵画の巨匠カンディンスキーを初めて紹介するなど、山田耕筰は芸術の様々な分野で才能を発揮した稀有な音楽家と言えるでしょう。

●「詩を大事にすること」を山田に学んだという嘉納さんは、「歌曲の詩には哲学があると教わりました。楽譜に書かれた詩は横書きだけれども、日本歌曲の詩を理解するには縦書きにして何度も読まないといけないとやかましく言われたものです」(産経新聞朝刊2. 1)。

●「太初(はじめ)に言葉ありき」。音楽の原点も、やはり「発声」にあるのではないでしょうか。歌曲となった日本語の詩も、正しく「発声」されてこそ「心」に伝わるのです。「譜面」の読み込みだけでなく、「歌詞」の読み込みの大切さを再確認するしだいです。  

(和田高幸)

←「まつむし通信Topへ」

↑PageTop

▲Top