まつむし音楽堂通信

 2015年 夏号

 

●桜島、口永良部島の噴火、さらには小笠原諸島西方沖の深海を震源とする全国的な地震…。ネパールでも壊滅的な地震が発生しました。国内外の気象異変は烈しさを増しているようです。戦後70年たった日本はいま、少子高齢化により人口は減少に転じて経済規模が縮小、高度経済成長期につくられた建物や公共インフラが老朽化するなど問題点が山積しています。ただ各種の危機管理に綻びがないことを願うばかりです。

●大阪にはかつて「大(だい)大阪」といわれた時代があって、町村の合併などにより人口は東京市(当時)を上回りました。関東大震災(1923)直後のことで、焼け野原から自由闊達な商都をめざして関東地方から移住する人々も大勢いたようです。船場を舞台に「細雪(ささめゆき)」を書いた谷崎潤一郎もその一人で、住まいは旧蘆屋(あしや)村(現神戸市東灘区)を転々としましたが、当時の大阪は、経済面でも文化面でも魅力にあふれていたのです。

●東北大震災により大阪に移住、あるいは仮住まいした被災者の数はごくわずかだったようです。「大阪へ行けばなんとかなる」「食っていける」という幻想が、もうなくなったのでしょう。経済活動よりも文化的な生活が優先される時代なんですね。その代り、LCC(格安航空会社)発着便の増加や「円安」効果でアジアからの観光客が激増、日本製の商品を「爆買い」しています。

●「あべのハルカス美術館」では「昔も今も、こんぴらさん」~金刀比羅宮(ことひらぐう)のたからもの~を開催中。円山応挙や伊藤若冲の障壁画を一挙に鑑賞できる機会を見逃す手はありませんが、かつては「金毘羅参り」も「お伊勢参り」も国民的行事といえるものでした。徒歩で各地を巡る、あるいは船で世界を旅するというのも、海洋民族の血を引く日本人の習性でしょうか。

●過密となった「一極集中」型に対して「多極分散」型の社会が提案されていますが、ここで「移住」か「定住」かという切口で日本列島を眺めてみてはいかがでしょう。都市の安全対策のヒントになるかもしれません。2020年の「東京」オリンピック大会は、各地に分散して開催する「全国」オリンピック大会となり、人々は4Kや8KのTV画面と向き合って、お目当ての選手の出番を待っていることでしょう―。  

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