まつむし音楽堂通信

 2015年 晩秋号

 

●11月11日、三菱航空機が開発する国産初の小型ジェット旅客機「MRJ」が初飛行に成功したというニュースをうれしく聴きました。今なおアジアの空で余生をおくる戦後初の国産プロペラ機、「YS-11」の開発から50年。一機で約300万点にものぼる部品を扱う航空機産業は、躯体や搭載機器などさまざまな素材や部品を統合する技術の集合体ですが、知恵と努力ばかりか、目標に向かう情熱、精神力がなければこの飛行はけっして成功しなかったでしょう。

●近ごろミナミでは、商店街や百貨店で「爆買い」を楽しむ外国人が増えているようですが、電器から化粧品、日用雑貨、食品にいたるまで対象となる商品の多くが日本製。「嘘を書かない」し「信頼できる」というのがその理由らしいです。高品質の商品を大量に生産できるノウハウは、もしかして日本人の遺伝子のなかにプログラムされているのかもしれません。

●日本橋(にっぽんばし)電器街の中古レコード店で見つけたLPレコードを聴くのは、わたしの最近の楽しみの一つですが、60-70年代のレコードにはラテンやハワイアン調で演奏した日本の民謡や、エレキバンドの草分け、ザ・ベンチャーズが作曲した「京都慕情」「雨の御堂筋」といった歌謡曲も含まれています。西洋人が奏でて日本人が歌う「和洋折衷」の音楽は、けっこうノリがよくて、なぜかリラックスするのです。

●心をゆるませる音楽が生まれる日本の空気には、外来のものを取り込んではそれを和(あ)え、さらに止揚(アウフヘーベン)するという文化的な因子が存在するのかもしれません。だからこそ、「おもてなし」が重視されるのでしょう。どうすれば打ち解けられるのか、相手によろこんでもらえるのか、と気遣い、気働きをすること。そこから生まれるのが「和」の精神、すなわち「日本」の風土そのものといえなくもありません。

●ただ気になるのは、宴会や団体旅行などで人と交わることを嫌い、あるいは苦手とする独身者が増えてきたことです。PCやiPhoneの画面をはなれて、たまにはお芝居や音楽会に足を運びましょう。生の舞台に触れて五感を鍛えることも、「和」の精神力向上の一助になると思うのですが―。 

(和田高幸)

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