まつむし音楽堂通信

 2016年 さつき号

 

●4月21日午前「パープルレイン」で一世を風靡したプリンスさんが57歳で亡くなりました。まだまだ活躍できるのに残念なことです。あらためて彼の音楽を聴こうと書庫を覗くと「THE PRINCE MIX」の30cmシングル盤が出てきました。さっそく200ワットのアンプを並列してHARBETH、YAMAHA、BOSEなど色とりどりのスピーカー6発をつないでレコード針を落としました。儀式のようなものです。

●ロックといえばかつてはエルヴィス(プレスリー)やビートルズを聴いていた世代(いわゆる全共闘世代)に属するのですが、プリンスやクイーン、セックスピストルズやピンクフロイドなどちょっと過激でアナーキーな音盤に郷愁を感じるのはなぜでしょうか。

●今でもそうですが、ロックコンサートといえば大音響というのが定番で、野外や球場で行われることが多かったからでしょう。つまり解放的なムードに浸ることができたからですね。大音響に浸って耳を解放すれば、精神も解放されるというアナロジーかもしれません。

●ところで近ごろは騒音を気にするためでしょうか、それとも軽便さのためでしょうか、イヤホンで音楽を聴くというのが主流になりました。自由な音量、音質で聴けるし人目を憚ることもありません。しかも大型スピーカーに比べれば価格も低廉です。

●反面、音楽を人と共有するという行為が限られ、自分の世界に閉じこもる傾向がでてくるようです。ただ難聴を避けるためにも、ときどきはイヤホンを外して耳を休めてほしいと思います。たとえば森林や海辺などは最適ですが、ハーモニカを吹いたり歌を唄うのもよいでしょう。

●自然音にはさまざまな倍音が豊富に含まれていますが、電子楽器(機器)は整数倍音しか発生しません。デジタル音源をイヤホンで聴いても不自然な感じがするのはそのためです。

●自然界には、超音波のような高次の倍音が豊富にあるので、耳がリラックスして知覚が向上するのですが、いっぽう都会は超音波に乏しくストレス感が強いというデータがあります。都会では、ナチュラルな空間でアコースティック楽器を演奏したり、歌を唄ったりするのが、手っ取り早い「音楽療法」といえそうです。

(和田高幸)

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