まつむし音楽堂通信

 2016年 夏号

 

●NHKの朝ドラ「マッサン」で登場したエリーのモデル、竹鶴リタさんは帝塚山学院で英語を教えていました。帝塚山学院はことし100周年、帝塚山のまちの歴史もほぼ100年です。ウイスキーもさることながら、洋画や西洋音楽も早くから帝塚山に根付きました。

●そのルーツをたどると大正時代の言語学者、石濱純太郎と初代の帝塚山学院長、庄野貞一にたどりつくのですね。庄野貞一の三男、庄野潤三は芥川賞作家ですが、同じく芥川賞作家で作詞家の阪田寛夫も帝塚山学院小学校の出身でした。阪田寛夫は、童謡「サッちゃん」でおなじみです。

●阪田寛夫のお母さんはクリスチャンで、阿倍野区の教会でオルガニストをつとめていました。有名な「椰子の実」を作曲した大中寅二は彼女の弟です。その息子、大中恩も作曲家、阪田寛夫の従兄弟にあたります。恩(めぐみ)は、「海ゆかば」を作曲した信時潔(のぶとき・きよし)に師事しました。

●信時一家もクリスチャンで、阪田家と交流がありました。信時潔も阪田寛夫も、幼少からオルガンの響きになじんでいたというわけです。石濱純太郎や藤沢桓夫をルーツとする帝塚山のサロン文化は、文学のみならず洋画や洋楽にも受け継がれ、今日に至っています。

●毎年5月末の週末に開催される帝塚山音楽祭のコミュニティイベント、「三つのクラシックコンサート」の最終日、フランク永井が歌っていた「こいさんのラブコール」(石濱恒夫作詞)をアンコールで演奏しました。昭和は遠くなりましたが、名曲は歌われ、そして語り継がれていくことでしょう。

(和田高幸)

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