まつむし音楽堂通信

 2016年 秋号

 

●〝フォークの神様〟ボブ・ディランにノーベル文学賞-。PPM(ピーター・ポール&マリー)のカバーで街中に流れていた「Blowin’ in the Wind」(風に吹かれて)をニュース番組で聞き、懐かしさと、そしてちょっとした驚きもありました。日本では「全共闘」、世界中で学生運動が吹き荒れる時代。「ウーマンリブ」もありましたね。当時の若者たちは〝解放〟を求めていたのでしょう。

●経済の高度成長期を象徴するような「帰ってきたヨッパライ」(加藤和彦作曲)で火が付いたフォークブームは、ジローズのヒット曲「戦争を知らない子供たち」(北山修作詞)で頂点に達したように思えます。大阪万博(1970)の3年後、日本はオイルショックに見舞われるのですが、その頃ヒットしたのが「神田川」(喜多条忠作詞、南こうせつ作曲)。フォークは、不況のどん底を生きのび、歌謡曲として定着したというわけです。

●ガロの「学生街の喫茶店」(山上路夫作詞、すぎやまこういち作曲)には「ボブ・ディラン」が登場します。「君とよくこの店に来たものさ 訳もなくお茶を飲み話したよ 学生でにぎやかなこの店の 片隅で聴いていたボブ・ディラン・・・」。学生たちのあいだでは、ディランはすでに日常の風景となっていたのです。

●「風に吹かれて」ならぬ「風」(北山修作詞、端田宣彦作曲)も聞こえてきます。「プラタナスの枯葉舞う冬の道で プラタナスの散る音に振り返る 帰っておいでよと振り返っても そこにはただ風が吹いているだけ」「何かを求めて 振り返っても そこにはただ風が吹いているだけ」・・・。

(和田高幸)

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