まつむし音楽堂通信

 2018年 春号(續)

 

●居住スペースを増やすために古書類を整理していると、「古くて新しい」情報が目に入ってきます。1974年、「日本沈没」で知られるSF作家の小松左京さん(1931-2011)が某紙の座談会で「異常気象は次の氷期へ向かう寒冷化現象ではないか」と発言しています。このところ太陽黒点の減少が続き、現在はほぼゼロ状態というのも気になりますが、温暖化とは裏腹に、すでに氷河期に突入したという学者の説が支持されつつあります。

●例年の花見報道も、ことしは寒気や大雪などリアルタイムの映像配信や精度を増した天気予報に飛ばされた感があります。人類は、情報網が密になると「精神的に傷つきやすく、鋭敏になる」と小松さんは書いていますが、「沈没」から半世紀、現在はもっと「傷つきやすく」なっているのでしょうね。

●ところで2016年の年間死亡者数が130万人。うち「在宅死」の割合は13%でその半数が孤独死(自宅で亡くなった一人暮らしの人)と推定されていますが、「自死」や「緩やかな自殺行為」といえるケースも少なからずあるというのが現実です。インターネットや携帯端末による情報交流の加速が、かえって「死」を早めているといったこともあるのでしょうか。

●2020年には「団塊の世代」(堺屋太一さんによる)がすべて70歳以上となり、社会構造も大きく変化するでしょう。火山の噴火、地震や津波、台風や洪水など異常気象のスケールが拡大、北半球では寒冷化が進むかもしれません。高齢化にともない人々のモバイリティ(動き)がしだいに鈍くなり、社会的閉塞感がさらに高まってきます。

●道路や鉄道、エネルギーや通信網など戦後インフラの老朽化だけでなく、政治や経済でもお手本となる理論がなく、法制面でも先例や判例がなく閉塞感が高まっているようです。これをブレークスルーするのは戦争か天変地異しかありません。しかし、核兵器はコンピュータ障害や気象異変を引き起こしますし、局地的に人工地震を起こしても抜本的な解決にはなりません。いずれにしても異常事態がやってくると思われますが、自然界は「なるようになる」のでしょう、きっと。

(和田高幸)

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