まつむし音楽堂通信

 2018年 残暑号

 

●原爆、終戦・・・お盆の頃には祖先の靈が還ってくるといわれています。まつむし音楽堂でも「物故者合同慰霊祭」(安倍晴明神社から神主出張)をおこない、生前お世話になった諸先輩方や友人、身内や音楽堂関係者など物故者のお名前をお誦みあげして供養のかたちにさせていただくことになりました。

●ワーグナーの楽劇には、インド哲学(佛教)に通底する「輪廻転生(りんねてんしょう)」のモチーフがたびたび用いられているという説があります。この世での因果応報が、あの世でも通じるという思想です。ワーグナーは、インド・ヨーロッパ語族の祖先は同一のアーリア人とする学説を肯定していました。

●『わたしは永遠だったのです。今も永遠ですが、あなたの幸せのためにこそ永遠です。甘い憧れの永遠のよろこび・・・』(ジークフリート第3幕)、と前世での繋がりをブリュンヒルデが高らかに歌います。楽劇「トリスタンとイゾルデ」では、毒薬が愛の妙薬に変わり、「死」が「愛」に転じます。過去世から現世をへて、死後の再生(あの世)へとつながるのでしょうか。「トリスタンとイゾルデ」の「前奏曲」における不協和音は、最後の「愛の死」における協和音によってめでたく解決されるというわけです。

●もともと佛教においては、死んだ佛は極楽浄土に往生するか、輪廻転生して天界・人間界・阿修羅界・畜生界・餓鬼界・地獄界の何れかに再生するものと考えられています。したがってお盆に靈魂が立ち戻るというのも変なはなしですが、忌み火を焚いて靈魂を迎え、忌み火で送るという習慣も、もともとわが国固有の神道(しんとう)に由来しているのかもしれませんね。

(和田高幸)

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