まつむし音楽堂通信

 2019年 夏号

 

●「G20」がまもなく大阪で始まろうという6月の下旬、米国によるイラン攻撃が現実になる10分前に、トランプ大統領が「待った」をかけました。最高司令官、大統領の「意思決定」に関与したのはたぶんAI(人工知能)でしょう。諜報機関による意思決定までの情報処理の速度は、今や数秒以下となっているのは確実で、結果や影響の程度も即座に表示されているのではないでしょうか。

●「もし、敵の将来の行動が、確実に予測されるようになれば、コンピュータはきわめて重要なものになるだろう。そして、人々は、コンピュータのいうことを信用するか、しないかを決めなければならない。なぜなら、コンピュータの特徴的な戦略は、先制攻撃だからである」(「1984 and after」:N・コールダー著、木村繁訳)

●科学ジャーナリスト(N・コールダー)がAIとの対話形式で執筆した「1984 and after」の翻訳が日本で出版されたのは1984年。もちろん小説「1984年」(G・オーウェル著)を意識したものですが、そこに書かれた「監視社会」は今や現実となり「バイオテクノロジーが人間に応用される」という予測も外れてはいません。人工知能(AI)もすでにS・キューブリックの映画作品「2001年宇宙の旅」(1968)に登場、月から木星へ向かう宇宙船の司令塔となっています。

●「G20」以後の世界がどうなるかはともかく、「苦境から脱出する」ための手っ取り早い方法として、コンピュータに「お告げ」(おみくじ)を求めるというのがN・コールダーの結論です。人間にはそれぞれ「夢」(希望)をもつ習性があって、たぶん最後には「無政府状態が続発する」、というのがAIのお告げの中身なんですね―。

(和田高幸)

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