[まつむし音楽堂]通信

2012年12-2013年1月号

 

●10月26日、心不全のため59歳という若さで亡くなった阿倍野区出身の音楽家、桑名正博さんの葬儀の日、喪服に包まれた多数のファンが阿倍野筋を埋めました。破天荒ながら律儀で人情味のあるミュージシャンとして名を馳せた桑名さんは、才能があっただけに音楽人生途上での死が悼まれます。

伊勢大神楽●昭和56年に国の重要無形民俗文化財の指定を受けた「伊勢大神楽」の真髄を披露する催し「神々の世界への誘い」(産経新聞社主催)が10月30日、天王寺区の生國魂神社で行われ、またとない機会なので見てきました。伊勢大神楽は、獅子舞と放下芸(曲芸)で構成される神事芸能で、江戸時代には20人の太夫がそれぞれ組をつくって各地を巡回、獅子舞で家々のお祓いをしては伊勢神宮のお札を授けていたというのが起こりです。

●お正月の行事として親しまれている獅子舞は、もともとは邪をはらうための荘重な舞が中心。いっぽう曲芸は、棒を器用に操る「綾採(あやとり)の曲」や皿回しなどで構成される「水の曲」(=写真)など、見どころ満点。「チャリ」と呼ばれる道化師が間の手をいれて笑いを誘います。

●大神楽の締めくくりは、伊勢神宮前の古市遊廓を表現した「魁曲(らんきょく)」。獅子が舞布の中に顔を隠すや、おかめ(天鈿女)に変身してクライマックスを迎えるという筋書きで、大勢の観客は大満足で喝采を浴びせます。

●民俗芸能の始まりともいえる里神楽。古事記の「天の岩屋」で天照大御神が「何由以って天宇受売=天鈿女(アメノウズメ)は楽(アソビ)を為し」と問いかける。歌舞による鎮魂、すなわち「楽」の原点が、アメノウズメ(オカメ)の舞であったと 再確認したわけです。

●師走の真只中。獅子舞演ずる歌舞音曲にあやかって邪をはらい、気持ちのよいお正月が迎えられるよう祈っています。

(和田高幸)

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