まつむし音楽堂通信

 2014年 秋号

 

●阪堺電車「まつむし」駅の名称は、謡曲にも登場する阿倍野の名所「松虫塚」に由来します。道路拡幅の際にも取り壊されずに残ったのは、歴史のなせる業でしょうか。ところで「松虫」交差点から北の方角、超高層ビル「ハルカス」に向けて伸びているのが「阿倍野筋」、通称「(国道)13号線」です。

●この道路が府道「長柄堺線」と知ったのはごく最近のことですが、かつては大阪の繊維産業を支えた堺・泉州方面からの基幹道路でした。現在では関空・紀州方面から大阪ミナミへの物流、観光のアクセスを担っています。にもかかわらず、キューズモールを核とする阿倍野再開発地域に至る直前の区間の拡幅が遅れ、車両一車線のまま慢性的な渋滞をもたらし、商業活動の妨げになっているのが実情です。

●戦後まもなく計画道路に指定されたものの、この区間の拡幅事業は約70年間放置されたままで、歩道を高速で通行する自転車の急増で歩行者との接触事故が増加するなど今日の交通事情から大きく外れています。阿倍野筋を走る路面電車が観光資源として注目されているのに、景観上も好ましいとはいえません。

●計画道路の整備が進まないのは、該当地域の収用に使う事業費が限られているというのが主な理由。ならば、歩道の一部を削って自転車専用道路にするとか、現在一車線のところを二車線にするとか、方法はほかにもあるでしょう。安心して回遊できる街をつくることは、少子高齢化対策にも有効です。

●阿倍野筋に面した「まつむし音楽堂」は、文教地区といわれる阿倍野区のまち全体が「キャンパス」として機能していて、まちの営みのすべてが教材となるような環境づくりを提言します。今回はちょっと苦情になりましたね。ごめんなさい。

 

(和田高幸)

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